
GOMI
マルチチャンネルレコーダーが16から24になったときの音のわるさとSNの
ひどさには驚いた。それ以前にインライン調整卓の音にぐったりしていた。
機能は進化したが肝心の音が後退してしまってはただただ呆然とするだけだった。
それにしてもトラック幅でこんなにもヒドイことになるのかと、改めて思い知
らされた。テープの巾が16チャンネルと同じ2インチだから録音されるトラック
がせまくなったのだ。とにかく失望した。とはいえ待望の24だった。
16チャンネルの不自由さは身にしみていた。現在のように(48ch)何も考え
ずにバラバラに録音するなんてことは夢のような話。リズムやセクションをまと
めて2チャンネル、つまりステレオにしてしまうとか、その後に続くオーバーダ
ビングをきっちり頭に入れておかないといけない。なんとかやりくりして、よう
やく歌のダビングに1チャンネル確保。いくらなんでも、1チャンネルだなんて
歌い手に失礼ではないか。だからチャンネル確保の為のプリミックス、つまりピ
ンポンをやることが常だった。
「え!リズムセクションを2チャンにまとめてしまうの」血相を変えてアレン
ジャーやディレクターがわめく。私は音のクオリティを気にしているのかな、と
思ったけど違うみたい。最終バランスのことを心配しているようなのだ。そんな
こと言ったって、私はその100倍も心配しているというのに。私が一緒になって
頭をかかえても始まらない。聞えなかったふりするしかないのだ。なんてこった。
できるだけジェネレーションをかさねないよう気を使うのだが「孫」「ひ孫」
気にしなくなっていた。だから最終ミックスは何世代になっていたのだろうか。
もしかしてあの時代の、骨のある音は、ここにあったのかもしれない。んなわけ
ないか。
この時代シンセサイザーの過渡期でもあった。そのダビング中に面白い音を見
つければ「ミックスのときいらないと思ったらカットしていいからね」人の気も
知らないで、そんな不純な動機で無駄なチャンネルを重ねてほしくない。
待望の24だったのだが現状は何も変わらなかった。あいかわらずチャンネルの
苦労が続いた。24チャンネルを2台シンクロさせて使うシステムはかなり後の事
になる。
24 チャンネル用のノイズリダクションの導入が遅れていた。16で普及してい
ればスムースに移行が出来たんだろけど16では使っていなかった。使う必要が
なかったのだ。
16と24はしばらくのあいだ混在していたのだが、チャンネル数の魅力でノイ
ズリダクションなしで24を使うことが多かった。24のヒス問題はウルサ系には
何とかごまかしながら使えたが、編成のうすい、しずか系ではごまかせない。
どうしようもないときイコライザーで10Khz以上を最大にして録音したことも
あった。再生時、逆のイコライザーでもどす。簡易ノイズリダクション。あまり
ほめられたやりかたではない。
ようやく導入されたときの感動もつかの間、新たな問題が浮上した。「なんだ
このフヌケな音は」16から24になった時以上のショックだった。特にリズム関
係はパンチのない音になってしまい、またしても呆然と天を見つめ途方にくれた。
ヒスかフヌケか絶望的選択。殆どの場合リズム関係はノイズリダクションのス
イッチをオフにした。オンにしながら再生時あえてオフにするトラックもあった。
何か特殊なエフェクターのようでも、過激なイコライザーのようでもある。フヌ
ケな音が功を奏した感があった。オンとオフがグチャグチャになってしまった。
しかしスタジオによっては導入していないところがあったからやっかい。その
後の作業の流れを怠って、ひどい目にあったのは二度や三度ではない。中止せざ
るをえないこともあった。
行きがかり上やむをえず、16で録ったものを強引に24に掛け、その後の作業
を進めたことがあった。16チャンネルの音はキッチリ独立して出る。実際には
フルにトレースしていないトラックもあるみたいだが。つまり、16で録った各
トラック巾が10だとしたら、3か、いや2か、まてよ1くらいかもしれない。
どこに録音していくかというと、私の記憶が正しければ、確か、3、6、9、と
2トラック毎に録音できたはずだ。今考えると「ゾッ!」とすることをしていた。
いつの時代でもそうだが、こういうジェネレーションの代わり目に付きものの
ゴミに逆らってもしょうがない。フラストレーションを起さない為にも諦めるに
限る。いつ迄も観念的になっていても前に進まない。キカイに振り回されるよう
なことはしない。どうしょうもないことには努力はしない。
この頃からだろうか、まわりがいろいろなパーツやケーブルにこだわり始めた
のは。与えられた条件の中で何が出来るのか。録音は物理的なものだけではない。
ゴミの所為にはしない。その考えはいまもかわらない。
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