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(あやしい録音屋) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
カッコイイ

 正式な楽器編成が発表された。
ドラム ベース ギターのスリーリズム。ティンパニー シロフォン ボンゴの
パーカッション3名。
トランペット4 トロンボーン4 うちバストロンボーン1。アルトサックス2
テナーサックス2 バリトンサックス1 バスサックス1。6人のサックスセク
ション。
 本来のビックバンド編成は最後のバスサックスはいない。バスサックスはバリ
トンサックスより音が低く、形はバリトンサックスに似ているが、管を一回転ひ
ねってある部分が真ん中近くにきていてその分管が長い。さらに低いコントラバ
スサックスというのもある。持っている人がいないらしくリースするという。
勿論バリトンサックス奏者が演奏する。これにストリングス14人。総勢34人
の大編成となった。
 早速セッティング図を作成しスタジオへファックスした。妙なセッティングと
思ったのか当日のアシスタントエンジニアから確認の電話が入った。録音意図を
説明すると「昔のリボンマイクがあるから用意しましょうか」といった。
 ビックバンドはコンサートのように並べた。最前列がサックス群。2列目トロ
ンボーン。3列目がトランペット。その左側にドラム。ウッドベース。セミアコ
ースティックギターがいる。このリズム隊とホーンセクションの間に低い衝立を
置いた。これは「分離させる」というより、かなりライブなスタジオなので少し
でも響きを吸収しようと考え。ただの気休めに過ぎない。
 ビックバンドと向かい合う位置に比較的大きなブースがある。ここに第一バイ
オリン6人と、第二バイオリン4人の10人が入る。ビオラ2人とチェロ2人は
一緒に入れないので隣のブースになった。
 ビックバンドの後側のブースにティンパニーとシロフォン。その隣のブースに
ボンゴ。ドアは開けたまま。
ベースとギターはアンプやラインは使わない。「なま音」を収録する。こういう
セッティングだからアシスタントエンジニアはビックリしたのだろう。
 パーカッションをブースに入れたのは特に意味がなく、スペースと距離のこと
でそこになった。同じフロアのつもりだからドアは開けてある。ストリングもそ
の精神で収録したいのだが、かなりライブなスタジオなので多分閉めることにな
るだろう。

 かつてのハリウッドの大歌手たちのレコーディングの話しを聞いたことがある。
大編成の録音で弦楽器が物理的にバランスがとれないとなると1プルト単位で、
つまり、2人づつ各パートが増えていったそうだ。バイオリンだけだったり低弦
だけだったりの事もあったらしい。
 コンダクターが「65小節目からストリングスはフォルテで」といっても聞えて
こない、こんな場合「二人づつ増やしてくれ」とプロデューサーにいったんだろ
うか。あるいは、もっと重厚なサウンドになりたい、すると低弦のチェロとコン
トラバスが増えていったのだろうか。私の今迄の経験ではこんなことはありませ
んでしたね。うらやましいというか、余裕のある話ですね。
「セーノ」とやってた時代は、調整卓のマイクレベルが同じような位置になるの
が理想なんだ。どれかの楽器を特別大きくしないとバランスがとれないと云う事
は、その分マイクの感度が上がることだから、目的外の音もドーっと流れこんで
くる。それはカブリの多い音になってしまい正しいバランスがとれなくなってし
まう。
 今の時代のように「小さければ大きくすればいい」でバランスがとれる事では
ないからね。アレンジャーやプロデューサーも、そういった計算が出来ないとイ
イ録音が望めなかった。イイ録音はお金で解決した………?。
 自分の技量を棚に上げていうんだけど、いいスコアを書いてこられてもダンゴ
状態にしか録音出来ないってありましたね。

 1987年3月20日午後6時。録音当日。音楽プロデューサーは「あの時代
の音を再現出来るのか心配だ」といった。《えぇぇ なんで今になって………
ビデオ送りつけてきただけで何の話もなかったじゃないか したところでどうに
もならないと思っていたんだろうな………》
「当たり前だ」といいたいところだったが「雰囲気が出ればいいんじゃないです
か」といったら「同じでなきゃ困るんです」と言下に返ってきた。
 フイルムの演出家は徹底したイメージで頑固に拘っているらしい。だから音は
オリジナルと寸分違わずつくれとのお達しなのだという。
 多分、最初からこのオリジナル曲を使うつもりでいたんだと思う。だがその使
用料というか、版権料というか、ウン千万円とかでリメークになったんだろうね。
だからって駄々をこねるようなことをいわれてもね。

 ミュージシャンは所定の場所についている。いつでも音は出せる。フイルムプ
ロダクション始め、代理店やスポンサーも揃った。
 音を出す前にラフ編集した映像をミュージシャンも含め全員で見た。勿論あの
オリジナル曲がついている。この場合、見るというより、聴いてもらう、という
ほうが正しい。
 スポーティなプロポーション。映画のタイトルバックを思わせる斬新なタッチ。
「カッコイイ」私の素直な感想。このホンダ「プレリュード」はミュージシャン
たちも大いに関心を持ったようだった。


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