
 
こっちのほうが……
最近、外国盤のクラシックを聴いていて、とても「ディジタルディジタル」してい
る音が多いのではないかと思った。ポップスと同じようなスタンスで録っているのだ
ろうか。人間の耳というのは都合よく出来ている。このあとにLP 時代のCDを聴くと、
時代を感じるのは別にして、何か物足りない。歳のせいで耳は劣化している事は確か
だが……。
文化の違いだとか、好みの違いだとかあるだろうけど、ハードディスクレコーディ
ングの普及が録音に対する考え方を変えさせてしまったのかな。その機能を考えれば
音の事は取るに足らない問題なのかもしれない。
LPレコード以外「認めない」という人には理解されないのだろうけれど、その音
質はディジタルの初期ような目のカタキにするほどの問題はどこにもない。
音の本質を解かっていようがいまいが、ディジタルを問題にしなくなった人は多い。
「だからそれでいいのか!」そんな声が聞こえてくるのだが、私はそれでいいと思っ
ている。
あちらはものの考えがとてもフレキシブルなんだろうね。「ディジタルとはこうい
うものだ」と、逆らわないのかもしれない。問題にするところが違うんだろうね。
日本も一時ほど『チューブ』だ『たま』だ、などといわなくなったのかな……。
(バンドの話じゃないよ)。説明するまでもなくマイクロフォンとか、イコライザー
その他、真空管で出来た機器の事ね。確かにヒリヒリギラギラと記録されるディジタ
ルの音には、ボケタ真空管の音が丁度いい具合に緩和してくれそれはお互いの欠陥が
イイ具合に働いて「耳なじみがよくなった……」そんな考えね。
この真空管の話を少ししてみよう。これまでストックされていたというものとロシ
アあたりで作られているという真空管は今でも手に入る。
あの真空管というのは、便所の電球のように切れてくれればいいのだが、何年使っ
ても切れない。こわれることがない。お線香の火のようなヒーターが点いている限り
音は出る。これが問題なんだ。
真空管は電気を通せば通すほどドンドン劣化する。高域が減衰して音質はドンドン
変わっていく。ようするに音質がボケてくる。どのくらい使えば交換なのか、賞味期
限は特に決められていない。
私はその昔、自分用の真空管を管理していた。自分の録音のとき、主にストリング
スに使うマイクロフォンはそうっと取り換えていた。少しでも音にイロツヤがなくな
れば新しいものと交換した。50時間前後で換えていたように記憶する。そのくらい
シビアな部品なんだ。
そしてその価格だが、秋葉原へ行くと同じ型のタマが二百円くらいから数千円と値
段に幅があった。(30年も前の話だよ)どれも音は出る。設計通りの特性に近いもの
ほど値段が高い。値段の差が音の差。勿論一番高いものを使う。それで始めてそのマ
イクロフォンの音がする。この時代、真空管はキッチリ管理され出荷されていた。
そんなケチなコダワリを持っていた頃だ。FETのマイクロフォンが登場した。真空
管でなくトランジスターだ。電源はバッテリーで、初期の頃はカメラのフラッシュ用
の特殊なバッテリーを使っていた。始めて使った時の印象をよく憶えている。
「これはだめだ………」
ギスギスした音だった。温かさがない。ふくらみがない。デザインが全く同じ真空
管のものと比較していた。ディジタルの初期の頃と同じような印象だったのだ。
しかし、皮肉な事に、現在、私には一番信頼出来るマイクロフォンになってしまった。
どのくらいの時間を使っているのかしらないが音は出る。問題はない。問題はないが
ちょっち違う感じだから交換してみる。「う〜ん、まださっきの方がイイか……」と、
元に戻す。「まだこっちの方がましかなぁ……」と、まぁ、こんな感じだね。耳で判断
するしかない。
腐ったら鯛ではない……とはいわないが「生態系が変わった」とでもいっておこう。
「意味がよく分からない?」分からなくてよろしい、そういうことなんだ。
以前ほど「タマ、タマ」と言わなくなったのは、こんにちのハードディスクレコー
ディングも含めたディジタルの音に慣らされてしまった。わけもなくコダワッテいて
は時代遅れ。それともディジタルの魔法のような数字に惑わされ、気が付いたら「タ
マ」を抜かれていた……。お後がよろしいようで……。
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FET (field effect transister)
電界効果トランジスタ
本来のトランジスタは電流を増幅するが、
FETは電圧を増幅する。
真空管のような動作で音も真空管に近い。
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