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イメージ(2)

 私は音やミックスに対して、どんどん意見や注文を言ってくれるのは大歓迎だ。
自分の中で膨らませ、またブレンドさせて「ナルホド」と思えば採用し「ドウシ
タモノカ」と思えば聞こえなかった振りをする。
 自分の趣味でものを言ってくるのはいいがマト外れでは困る。それぞれ意見が
違って当たり前だが、少なくとも目的をしっかり理解した上で意見を言ってほし
い。ただ混乱させる発言はクリエイティブなことではない。

 私くし、同じ曲を6回ミックスしたことがあります。この時のディレクターは
他の人達と少し仕事のやり方が違っていた。ヘッドアレンジに近いベーシックの
録音はどんどん変更をかさねてゆく。アレンジャーやミュージシャンは、お互い
気心知れていないとつとまらない。
 そんなかたちで録音が進行するからその世界は手に取るように見えてくる。
その後に続くダビング作業から完全にミックスのイメージは出来上がる。ディレ
クターはそんな空気を大事にしようとするのか、歌が録れると直ぐにミックスに
入る。

 全ての曲がこんなかたちで進行するのではないが最初のうちは戸惑いがあった。
突然ミックスといわれても、気分が切り替らないのだ。ベーシックの録音の時、
歌入れの時、ミックスの時ではその精神状態というか、音の聴き方が全く違って
いる。強制的なこころの切り替えが完全にオンにならなかったはずはないと思う
のだが、必ずと言っていいくらい再ミックスになった。

 最初の頃は些細な注文で再ミックスをするのだったが、回を重ねるにしたがっ
て全然違う世界になってくる。録音時にドップリ入り込んでいた世界はどうした
のかといいたくなる。イメージは出来ていたはず。悩むのはいいが試行錯誤して
ただイタズラに迷惑かけるのはいい加減にしてほしい。
 私は自分の画いた世界が正しいと思っている。一応理解したような返事はする
ものの、その中でミックスしようとしていたのかもしれない。

 5回目の時だった。意識的にこれまでの事を全て無視してミックスした。全く
違うミックスをつくることによって別の角度からその方向が見えてくるのではと。
とってもクリエイティブに思えるでしょう、そんなことある訳がないんです!!。
 私は完璧なミックスが出来て終っていると思っていますから、不謹慎だと思い
ましたが遊びでした。
 とってもポップなサウンドにした。「いまふうでイイな」「私だってこんな音
がつくれる」と楽しんでやっていた。白が黒になってしまった。
 ディレクターは怒りまくりました。荒れたんです。驚きましたね。ここまでに
るなとは思いませんでした。(まぁ・・・あたりまえか・・・)

 回を重ねる毎に彼の注文はミキサーの領域を超えていた。ミックスで出来る事
と、出来ない事がある。私に注文を出すような事ではない。後で何とかしようと
思ったのだろうけど、後で何とかなる録音ってあるのか。もう一度、歌うなり、
演奏するほうが早いのではないのか。「コノオチョウシモノガ」無責任過ぎる。
 これははっきり言って尻拭い。ディレクターとしての仕事をわきまえていない。
私は反省しつつもイカリがおさまるのを、ただジィッと待っていた。仕事はもう
続けられない。やがて気分がおさまったのかボソッと言った「他の曲のミックス
の時にもう一度トライしてほしいい・・・」
 私はとっくに飽きている。忘れた頃にやるのがいい。それにしてもどうしてほ
しいのだろう。もっと解りやすく、具体的にいってくれたらあなたのいう通りに
やる。いっていることが抽象的で雲を掴むようなことばかりではないか。しかも
どんどんいうことが変わって矛盾だらけ。これでは出来るわけがない。
 そして、あろうことに第一回目のミックスがOKになった。ア〜ぁ、何をしよ
うとしていたのか。あの騒ぎは何だったのか・・・。世の中、こんなもんなんだ。


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