各楽器をどう配置するか。一番大事なのはこのセッティングではないだろうか。
スタジオそれぞれに、考え抜かれたセッティングがあるから、それに準ずる事が
多い。私の場合、サウンドをイメージし、回り込みを計算した上で楽器を配置す
る事もある。
一発同時録音の場合だったら、どんな位置関係で楽器を配置するのか。どの程
度のカブリだったら許されるのか。衝立を置く必要があるのか。楽器によっては
カブリによる自然な拡がりや距離感などは、どんなエフェクターにもかなわない。
こういった細かいイメージをしたうえで、マイクロフォンの選定とそのマイク
セッティングを決める。
例えばロックグループなどの場合、誰もがライブハウスのようなパワフルなサ
ウンドをイメージするだろう。ところが、いろいろな事情で音の「差し替え」を
余儀なくされる場合、ブースに押し込む事になってしまう。隔離しないまでも、
「差し替え」可能なセッティングを考える。
ロックに限らず全ての音楽について言えることですが、これでモロくも、最初
のイメージ「熱気」とか「一発入魂」とかは望めなくなってしまう。
ミックス時にそんな事情だったことを解っていながら無い物ねだりの無理難題
な注文が出る。タマシイのない演奏にタマシイを要求する。それは下手をすると
どんどんエスカレートする。
中には具体的なアーティストの作品を取り上げ「あの感じなんだよね・・」迄
はいいがいきなり「こんな音にしてほしい」とサンプルを聴かされる。「レベル
が違い過ぎると思わないのかい・・・」と言いたくなる。
事前の打ち合わせ等で「音」はイメージ出来ても、イコール、マイクロフォン
等を含めた「これでないと」と言う機材はない。私の場合、何でもよい。使用す
るスタジオの条件に合わせて、どうセッティングし、どんなアプローチで録音す
るか。そんなことが先決だ。
ライブハウス状態でしかセッティング出来ない場合もある。そんな場合の差し
替えは演奏者側に協力してもらうだけ。いくらマルチ録音でも、そのセッティン
グは30年前と変わらない同時録音状態だから、一人のミスの為に他のミュージ
シャンに迷惑をかけることになる。
差し替えて問題なければどんどん実行する。どうしてもバレてしまう場合、
もっとも影響のあるトラックの人に協力してもらい、一緒に演奏する。
それでも駄目なら全員でもう一度録音する。これでイイテークが録音できれば
いいのだが前のテークが諦めきれない場合は編集する。
ビートルズの初期の頃の録音には、どういう経緯だったのか、差し替えがバレ
バレなのがあるのだが・・・。
セッティングが決った。したがって音も決ってしまった。ここに特別な機材を
持ち込んだところでそれ以上のことは何も起こらない。
マイクロフォンのキャラクターの違いが、楽器や声に合わないというのはある。
それは性能の事ではない。「オン」で使うマイクロフォンと「オフ」で使うマイ
クロフォンがある。独断と偏見で言ってしまえば、スタジオで発揮できるマイク
ロフォンと、ホール等のような空間で発揮出来るマイクロフォンがある。
そういうことを踏まえながらも、希望するモノが使えないならそれに換わる物
で可。歳の割りにはとてもフレキシブルな人と思って戴きたい。
「これでないと、この音は録れない」というのはない。私にはこだわってまで
使いたい機材はない。残念ながら未だそんな機器にめぐりあっていない。あるの
なら誰にもおしえないで、ソーッと持っていたいものだ。