私くし、ミキサーとして、規準の音ってあるのか、と言うと、アルようでナイ。
ナイようでアル。としかいいようがない。とってもイイカゲンですね。
いきなり本題にはいります。「規準の音」それはあくまでもプレーヤーの出す音
なんだ。
例えば、クラリネットという楽器があります。殆どの音楽ファンは瞬時に音を
イメージ出来ると思う。このイメージ出来た音が、私の言う「規準の音」です。
しかしながらこのイメージ、かなり個人差があるから面白い。クラリネットと
いわれて、誰か、特定の人とか、音楽をイメージ出来ます?。音楽ファンでも、
意外と楽器の音って知らない人が多いんだっ。古いですが、ベニーグットマンと
か、クラシックファンならモーツアルトなんかの曲をイメージするのかな・・。
話はちょっとそれますが、少し昔の話です。アコーディオンをフィチャーした
ヨーロッパの香りがする、ちょっとおしゃれなコマーシャル音楽の録音でした。
この時「傷痍軍人を思いだす」と言ったクライアントがいました。ビックリする
前にイメージの貧困さに驚きました。えらいクライアントさまのお言葉です、他
の楽器に替えた事は言うまでもありません。作家は嘆きそしてスコアを床に叩き
つけました。
まぁ、ある世代の人に限られるんでしょうが、日本人の音楽(楽器)に対する
イマジネーションって以外とこんなもんなんです。今の若い人たちはたくさんの
音楽の中で育ってきたから、冗談でもこんなバカを言わないと思いますが・・・。
話を戻します。クラリネットでモーツアルトの曲を録音するとしましょう。
プレーヤーはプロですから、当然出す音はすばらしいにきまっています。そして、
10人いたら10人とも違う音が出るでしょう。
どれが本当のクラリネットの音なのか、ガンコにガーシュインのラプソディイ
ンブルーに固執していい訳がありません。
この曲をどう録音するのかだ。先ずプロデューサーや、ディレクターの意見を
聞く必要があります。勿論プレーヤーからもです。一番手っ取り早いのはそのC
Dを買って聴くことです。
録音スタジオの音のイメージをする。つまりどんな響きがするのか。それによ
って楽器の配置、つまりセッティングが決まります。アンサンブルならどんな位
置関係がいいのか、これが大事です。録音側の都合だけで決められません。そし
w
てマイクロフォンやその他諸々の選定となります。
これでイメージする音が90パーセン決定しました。規準が出来たのです。
このイメージのしかたで、そのアプローチは変わりますから、録音される音も違
ってきます。つまりイメージとは賭けなんですね。
さあ、音が出ました。大概の場合 予想通りの音が出てきます。そして、より音
楽的なイメージに近づけるための、微妙は作業が待っています。
私のスタジオワークの場合、結婚式場の写真屋さんのように、ファインダーを
覗いては・・・、をくり返し、いつになったらシャッターを押すんだ、というこ
とはありません。そのセッティングはイメージ通り、殆ど完璧です。
ホール録音の場合は違います。写真屋さんのようなことになってしまいます。
これがミキサーのクリエイティブな作業、アーティスティックな作業、といえば
聞こえはいいが、微妙で神経質で、コダワリだか、ヘンクツだか分からないよう
な作業は、実は、裏を返せば、どうでもいいようなことばかりなんですね。とに
かく10パーセントに満たない作業なんだから。そんなことで「決定的録音にな
った」なんてことはありえない。あくまでも、イメージした「規準の音」の最終
微調整なんだ。