なんとも実に味わい深い録音だ……。自画自賛しているわけですが、その理由は
私が録音した始めてのアルバム(ミュージックカセット)ではないかと思うからだ。
多分、1967年の録音だと思うが確かな記録がない。とりあえず1968年の
リストのトップに載せることにした。
カセットレコーダーがオーディオ用として普及する以前は、主に語学用だった。
そのレコーダーは、文庫本二冊を横に並べたくらいの大きさで、小さなスピーカー
が付いていた。勿論モノラル。
オランダフイリップス社製のオーディオ用ステレオレコーダーがあったがとても
高価だったと記憶している。国産のステレオデッキはどこのメーカーからも売り出
されていなかった。
カーオーディオがエンドレス式の「エイトパック」という製品が普及し始めた頃
だから、カセットの音楽ソフトなんてものも当然なかった。
テープメーカーのТDK社は開隆堂の中学英語「ニュープリンス」をテイチク会
館スタジオで録音していた。カセットテープと教科書がセットになっていたあれで
す。あの時代、これで勉強した人は多いと思います。67年と68年、私が録音担
当していました。
私は市ケ谷スタジオ時代、多くのラジオ番組を経験していたのでおしつけられた
ようだった。その内容はラジオドラマのようでもあったし、そしてテープ編集がか
なり多かった。このテープを切り貼りする作業が早かったので重宝がられていた。
ТDK社がダイナミックレンジとローノイズを売り物にした音楽用カセットテー
プを発表し、同時に「ガウス社」のデュプリケーターを導入した時、ミュージック
カセットテープを制作し発売した。
この音楽制作ディレクターが、中学英語「ニュープリンス」のディレクターだっ
た。そんな関係で音楽ミキサーとして評判が出始めていた私を抜擢したのだった。
「ニュープリンス」の録音を務めたゴホウビだったのかどうか分りませんが、今に
して思えばディレクター、大変な賭けに出たものだと思う。
5ダブルス発売された内、4ダブルスは当時の一流のミキサーばかり。それにし
ても、一番やっかいな編成を、経験が乏しいただの未熟ものにやらせるとは……。
きっとディレクターは後悔したのではないかな。
とにかく冷や汗ものでやった記憶がある。後日いまでいうマスターリングをして
いた時は、恥ずかしくてスタジオから逃げ出したかったことを覚えている。製品が
出来上がってきても聴けなかった。周りにステレオカセットデッキがなかった。
フイリップス社製のデッキを持っていた人は買ってくれたのだろうか。
それから何年後のことだったろうかオーディオカセットが一般的になってからだ。
たまたま聴いてしまった。未熟さかげんに愕然とし、二度と聴きたくないと思った。
そして完全に忘れていた。それが、身辺整理をしていたら大量のカセットの中から
出てきたのだ。いまこうして聴くと、ヘタクソなりにシミジミとせつなく実に味わ
い深い。興味ある人は曲名をクリック。